含み損増えてきたなー
はやく損切りしないといけないのでは?
これはまだ上昇トレンドの押し目だから大丈夫ですよ
大丈夫かな。。。
人は危機に直面すると、なにも危険はないと思いこもうとする傾向があります
この傾向を正常性バイアスとよびます
危機的状況に陥ったとき、あなたはどう行動するでしょうか
慌てふためいて逃げまどうでしょうか
それが当たり前だと思うかもしれませんが、実際にはそうではない人も多くいるようです
例えばトルネードが近づいているときでさえ避難しない人がいるらしいです
普通に考えるとおかしな行動のように思えますが、その原因は人間の心理的傾向によるもので、誰にでも備わっています
正常性バイアスって何なのか、トレードにはどんなふうに影響するのか書いていきます
正常性バイアスって何?
冒頭に書いたように、人は自分が危険な状況に置かれるとその状況は危険な状態ではなく、いたって正常だと思い込もうとする傾向があります
この心理的な癖を正常性バイアスと呼びます
このバイアスによる行動は人間の心が不安を寄せつけないために起こります
今の状況はいたって正常だと思い込み、平常時と同じ行動をとることによって自分の心が不安にさらされることを避けているのです
危険が迫ってきたらすぐ逃げるのが普通じゃない?
FXだって本当にやばくなったらすぐ損切りしますよ
実際にはそうではない人もたくさんいるんです
トルネードが来ても避難しない人たち
正常性バイアスによって危機的状況でも普段と同じ行動をとってしまう例を1つ紹介します
1999年 アメリカのオクラホマ州をトルネードが襲いました。そのうちの1つがブリッジ・クリーク=ムーアF5です。
名前のF5は竜巻の強さを表す尺度からとられたもので、車が空に舞い上がるレベルよりさらに上の等級です
これだけ大きい竜巻なので、当時竜巻警報が30分前には発令されていましたが、避難もなにもせずに亡くなった人がいました
傍から見ているとなんで避難しなかったのか疑問に思ってしまいますが、実際にその立場におかれないとどんな気持ちになるかはわかりません
避難しない理由
危機的状況に追い込まれたとき、人はいくつもの段階を踏んでやっと避難行動をとります
①自分の知っている物事に、今の状況を当てはめる。重大性を過小評価してしまいがち
➁情報を周りから得ようとする
③家族に連絡する
④逃げ場所、避難経路を確保する
⑤避難
すぐに逃げ出せばいいのにと思いますが正常性バイアスが働くとどうしようもないのかもしれません
特に①のステップが厄介です
地震に例えてみます
今まで震度4の地震しか経験がない人が震度7の地震を経験したとします
この地震のやばさを体感で測るとき、基準は昔体験した震度4の地震です
アンカリング効果でどうしても基準に自分の判断が引っ張られてしまうので今起きている震度7の地震への評価は過小評価になってしまいます
その結果、自分の心の平穏を保つために自分に”大丈夫、問題ない”と言い聞かせます
そして次の行動が遅くなってしまい、最悪の場合逃げ遅れて命を落とすということにつながります
正常性バイアスのせいで逃げ遅れないために
トルネードの例では避難した人も当然いて、そういう人たちは助かっています
避難する人としない人の差はなんなんでしょうか
1つは事前に準備していることです
竜巻が来ていない本当に正常な状態のときに、こうなったら避難するということを決めておくのです
そうすればいざ避難するときに何も考えず、事前に決めておいた避難行動に従うだけでいいのです
事前の計画はできるだけ具体的なほど良いと思います
正常性バイアスが立ち入る隙間をなくすためです
あいまいな行動予定は正常性バイアスによる避難しないための言い訳に負けてしまうかもしれません
トレードで相場の逆行から逃げ遅れないために
FXのトレードで大損しないための損切りの逆指値をエントリー注文と同時に出しておくという作戦があります
スキャルピングなどずっと画面にはりついてトレードする手法の場合は必要な時が来たら自分で損切り注文を出せばいいと思ってしまいますが、正常性バイアスのことを考えると事前に逆指値をいれておくのがよさそうです
エントリーから10pips逆行したら損切りするというプランでトレードを始めたとしましょう
いざ損切りラインまで含み損が達したとき、正常性バイアスが顔をのぞかせます
損切りラインまで到達してしまった。。。
まだまだ大丈夫。
この前はこれくらいの逆行から予想の方向に動いたよ
確かに!ここはホールドだ!
これでうまくいくときもありますが、こんなふうに自分の心理に支配されたトレードでは安定して利益をFXで伸ばしていくことは難しいでしょう
相場の勢いなどを見ながらその場その場の状況に合わせてトレードするやり方を否定するつもりはないですが、初心者のうちは含み損を抱えた状態で冷静な判断をするのは難しいです
事前に避難計画=損切り逆指値を設定しておくのがよいと思います
正常性バイアスのよくある質問
正常性バイアスと楽観バイアスはどう違うのですか?
正常性バイアスは「異常事態でもいつも通りだと考えてしまう」傾向を指します。
一方、楽観バイアスは「自分は大丈夫」「悪いことは起きない」と過度にポジティブに捉える心理です。どちらも現実認識を歪めますが、正常性バイアスは状況判断、楽観バイアスは結果予測に関わる違いがあります。
正常性バイアスは誰にでも起こり得ますか?
はい。年齢や経験に関係なく、誰にでも起こり得る心理です。
特にストレス下や不確実な状況では、「現状維持を望む心の防衛反応」として働きやすくなります。
普段から危機に備える習慣が少ない人ほど影響を受けやすい傾向があります。
正常性バイアスはどんな場面で現れやすいですか?
地震や火災などの災害時、金融市場の急変時、健康異常の兆候を感じたときなど、「異変が起きても信じたくない」場面で現れやすいです。
普段の生活で「まさか自分には起きない」と感じたときも、このバイアスが働いている可能性があります。
トレードで正常性バイアスが働くとどうなりますか?
含み損を抱えても「すぐ戻るだろう」と判断して損切りを遅らせるなど、重大な判断ミスにつながります。
また、明らかなトレンド転換を無視したり、リスクを過小評価してポジションを持ち続けたりすることもあります。
冷静な損切り判断ができなくなるのが典型的な症状です。
正常性バイアスを防ぐにはどうすればいいですか?
事前にルールを明文化しておくことが最も効果的です。
エントリーと同時に損切りラインを設定する、客観的なトレード日誌をつける、過去の失敗パターンを定期的に見直すといった行動が、心理の歪みを抑える助けになります。
また、他者の意見を取り入れるのも有効です。
逆指値を使えば正常性バイアスを防げますか?
逆指値は有効な対策の一つですが、万能ではありません。
価格の急変やスリッページが発生すると、設定した価格で約定しないこともあります。また、逆指値を「広く取りすぎる」ことで心理的安心感だけを得てしまうと、本来のリスク管理効果が薄れます。
投資以外でも正常性バイアスは問題になりますか?
はい。防災、健康管理、ビジネス判断、人間関係など、あらゆる分野で発生します。
「まだ大丈夫」「自分は例外だ」と思い込む心理が、危険の察知を遅らせてしまう点が共通しています。たとえば災害時の避難遅れも、正常性バイアスが原因のひとつです。
正常性バイアスのサインにはどんなものがありますか?
「大丈夫」「そのうち良くなる」と繰り返し口にする、周囲の警告を軽視する、問題を先送りにする、都合の良い情報だけを集めるといった行動がサインです。
これらが見られるときは、すでに正常性バイアスが働いている可能性があります。
正常性バイアスとリスク管理はどんな関係がありますか?
リスク管理は「最悪の事態を想定して備える」ことですが、正常性バイアスはその最悪を無視してしまう心理です。
つまり、正常性バイアスを自覚すること自体がリスク管理の第一歩です。感情と客観的データを分けて判断する習慣が、損失を防ぐ大きな助けになります。
正常性バイアスを克服した事例はありますか?
防災や航空業界などでは、訓練やシミュレーションを通じて正常性バイアスを抑える研究が進んでいます。
投資の分野でも、行動ファイナンスを学び、自分の心理傾向を可視化することで克服した事例があります。実際に「最悪を想定して準備する」意識が最も効果的です。
正常性バイアスと損切りのまとめ
正常性バイアスは、異常な状況でも「自分だけは大丈夫」「いつも通りだ」と思い込んでしまう心理的な錯覚です。
災害や事故、相場の急変などの危機的場面で、行動を遅らせたり判断を誤らせたりする要因になります。
特に投資やトレードでは、このバイアスによって損切りを躊躇したり、リスクを軽視したりすることがよくあります。
日常生活でも、健康リスクや災害リスクを軽く見てしまうなど、多くの場面で影響を及ぼします。
対策としては、あらかじめ行動ルールを決めておく、感情を排した判断を心がける、他人の意見を積極的に取り入れるといった方法が効果的です。
自分の思考が「現実逃避的になっていないか」を定期的にチェックする習慣を持つことが、冷静な対応力を高める鍵となります。
異常事態ほど「いつも通り」が通用しません。
正常性バイアスを理解し、想定外の出来事に備えることで、より安全で理性的な判断ができるようになります。
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