価格変動の度合いを示す言葉で、「ボラティリティーが大きい」という場合は、その商品の価格変動が大きいことを意味する
短期トレードにおいてはボラティリティの大きい銘柄が好まれる
株価や為替などの価格変動率の大きさをボラティリティ(Volatility)という
急騰と急落を繰り返す相場では、株価の変動率が大きく、ボラティリティが大きいと表現する
反対に、小幅な値動きが続くときはボラティリティが小さいという
また、オプション価格の変動から計算された将来の価格変動率をボラティリティとよび、こちらはオプション市場参加者の価格変動についての市場予測を反映しているとみなされている
銘柄のリスクを測る指標としてのボラティリティ
現代ポートフォリオ理論などでは、このボラティリティーを標準偏差で数値化し、それをその商品のリスクの度合いとして捉える
そのため、ボラティリティーが大きい商品はリスクが高く、ボラティリティーが小さい商品はリスクが低いと判断される
標準偏差で算出したボラティリティーが大きい場合、実際のリターンと期待収益率(予想されるリターンの加重平均値)とのブレが大きくなる可能性が高いことを意味する
そのような価格変動のブレの大きい商品は、多くの人が避けることから、一般にリスクが高いと判断される
ボラティリティブレイクアウト
直近の価格変動幅、すなわちボラティリティを超える上昇や下降が起こった場合、その変動幅の特性に乗じること
ロウソク足やボリンジャーバンドを用いる方法がある
ボラティリティの種類
ボラティリティには2種類ある
ヒストリカルボラティリティ(HV)
過去の一定期間のデータをもとにして計算された変動率のこと
過去の動きから現在の値動きを予測する場合に用いられる
頭文字をとって「HV」と呼ばれるほか、歴史的変動率と訳されている
統計学では標準偏差である「σ(シグマ)」に該当し、株式や為替、金利や債券、コモディティといった過去の原資産価格の変化率の平均値から算定する
代表的なものは、日本経済新聞社が公表している日経平均株価を対象とした、日経平均HV
インプライドボラティリティ(IV)
オプション価格から逆算して計算され、市場における将来予想が反映されるといった未来のボラティリティを表すもので、頭文字をとって「IV」と呼ばれている
日本では予測変動率と訳され、オプション取引におけるテクニカル分析指標としても活用されている
投資家にとって未来の値動きの予測は非常に重要なためヒストリカルボラティリティよりもインプライドボラティリティが重視される傾向にある
ボラティリティが高い商品(銘柄)の特徴
ボラティリティが高い銘柄の特徴は、下記のとおり
- 上場したばかりの銘柄
- 高業績といったプレスリリースを行った直後の銘柄
- 市場で人気を集める小型成長株
ボラティリティが高い銘柄を購入すれば、エントリーから短い時間で大きく値動きすることが期待でき、短期的に高い利益をあげる可能性がある
その半面、「どのタイミングで購入するか」「いつ損切りをするか」といった判断を間違えれば、大きな損失を招く可能性もある
ボラティリティが低い商品(銘柄)の特徴
ボラティリティが低い銘柄の特徴は、下記のとおり
- 安定した業績を維持する大型の銘柄
- 業績が景気の動向に左右されにくいディフェンシブ銘柄
このような銘柄の多くは、株価に値動きが少なく安定している傾向にある
そのため仮に中長期的に保有した場合でも、損を出しにくい運用が可能といえる
反面、短期的な投機を考えた場合、株価の安定性から株式売買による利益は上がりにくくなる
ボラティリティの活用法
ボラティリティの活用法は4つ
- 短期トレードに適した銘柄かどうかの判別
- 相場の大きな変動を予測
- 中長期投資のリスク判断
- 投資金額の判断
①短期トレードに適した銘柄かどうかの判別
短期トレードに適した銘柄の特徴は、「値動きの幅が大きい」「流動性が高い」など。
ボラティリティが小さい場合、トレードに大きな変化がないため売買チャンスを確認できないまま終わってしまう可能性もある
短期トレードを考えた際は、ボラティリティの大きさをひとつの判断基準にできる
②相場の大きな変動を予測
ヒストリカルボラティリティを見たとき長いスパンで低いボラティリティを維持していれば、「相場として動きが少ない」「変動トレンドのエネルギーを蓄えている」と判断できる
このようなボラティリティのトレンドでは、一旦ブレイクアウトすれば変動幅も大きくなると想定される
ヒストリカルボラティリティが低下トレンドになっている銘柄をコツコツ買いためるというのもありかも
③中長期投資のリスク判断
中長期投資の場合、「ボラティリティが高い銘柄ばかりでは、リスクが高くなる」「ボラティリティが低い銘柄ばかりでは、リターンが少なすぎる」といった問題が生じる
そこで中長期投資におけるリスクとリターンの両面をあらかじめ考え、ボラティリティを目安に投資対象を選別する
たとえば景気悪化を考慮し、ボラティリティが低い銘柄を組み込んでリスク回避を狙うといった方法がある
④投資金額の判断
資産運用を成功させるためには、投資先の分散によるリスク管理が有効
ボラティリティの大きさを考えて投資配分を変えられれば、リスクを極限まで回避した資産運用ができる
資産運用における一般的な投資金額の配分の目安は、下記比率
この目安をもとに、投資姿勢にて比率を変動させるとよい
- ボラティリティが大きい変動幅の大きい銘柄は10%
- ボラティリティが小さい変動幅の小さい銘柄は60%
- 現金保有は30%
ボラティリティの計算方法
①ヒストリカルボラティリティ(HV)の場合
ヒストリカルボラティリティのボラティリティは、「《『[[(前日比率-前日比率平均)の2乗]のn日合計]÷[n日]』の平方根》x《m日の平方根》」で算出できる
上記の計算式では、下記のようになります。
- 標準偏差は《『[[(前日比率-前日比率平均)の2乗]のn日合計]÷[n日]』の平方根》
- 単位率にするために《m日の平方根》を乗じる
表計算ソフトExcelを用いて計算する場合の計算式は、「《STDEVP(サンプル期間の前日比率の時系列データ)》x《SQRT(単位期間)》」
②インプライドボラティリティ(IV)の場合
インプライドボラティリティの場合、特別な算出方法はありません。
ただし上場オプションに関しては、プレミアムと呼ばれるオプション価格で取引されている
そのため1973年に発表された、オプション価格算出のための理論式ブラック・ショールズ・モデルを使って、インプライドボラティリティを計算できる
ブラック・ショールズ・モデルとは
オプションの理論価格を算出する計算モデルのこと
1973年、米国の経済学者であるフィッシャー・ブラックとマイロン・ショールズによって、考案・発表された
当初、無配当株式のオプションが前提の計算理論だったが、現在ではさまざまな取引形式に応用されている
ブラック・ショールズ・モデルでは、ボラティリティに関する下記5つの変数を用いて計算する
- 原資産価格
- 権利行使価格
- 金利
- 残存期間
- 原資産
難解な計算式であるものの、原資産と金利資産からなるポートフォリオとポートフォリオの現在価値がベースとなっている
ボラティリティの注意点
ボラティリティの注意点は2つある
- ボラティリティだけでは判断できない
- ボラティリティが高い銘柄は流動性リスクがある
①ボラティリティだけでは判断できない
ボラティリティを計算して数値がわかっても、その数値を見ただけで投資の適不適を判断するのは困難
ボラティリティからは値動きの変動幅の大きさがわかる
よって実際に売買を行うための判断には、テクニカル指標を有効活用し、個別銘柄についてより深い分析が必要
ボラティリティは、あくまでひとつの判断材料だという認識が必要
②ボラティリティが高い銘柄は流動性リスクがある
ボラティリティは、値動きの変動制と市場での流動性の両方を示す指標
変動率ばかりに気を取られると、市場における流動性のリスクを負うケースがある
「買いたいときに買いたい値段で買えない」「売りたいときに売りたい値段で売れない」といった流動性リスクも、判断材料のひとつに入れる必要がある
ボラティリティは時間帯によって変わる
FXは年末年始、土曜日・日曜日を除けば平日の24時間は取引が可能
日本での祝日も海外では休みではないので、祝日でも24時間で取引できるつまり、投資家の都合の良い時間で取引が可能なのです。
しかし、東京・ロンドン・ニューヨークでは値動きが変わる時間帯がある
何か値動きに大きな影響を与える特別なことがあれば別だが、それぞれ時間帯毎に下記のような特徴がある
・東京時間の値動き(日本時間9時~15時)
9時~15時の東京時間の値動きは穏やかで、前日の値動きが継続するケースが多くなっている
トレンドが発生する際も緩やかなトレンドで、ボラティリティもどちらかと言えば小さい時間帯
・ロンドン時間の値動き(日本時間16時~24時頃)
ロンドン時間は日本時間で16時~24時頃のことを言う
ロンドン時間は東京時間と比べて大きな値動きを見せる、ボラティリティの大きな時間帯
値動きも大きいので、ロンドン時間の値動きに乗ることができれば値動きの大きさから利益を狙っていくことも可能
ロンドンは世界一の為替取引市場であり、もっとも大きな値動きが起きる市場
・ニューヨーク時の値動き(日本時間22時~6時)
ニューヨーク時間は日本時間で22時~6時のこと
ニューヨーク時間とロンドン時間が重なる22時~24時は、もっとも値動きが大きい時間帯
ニューヨーク時間もロンドン時間と同様、値動きが大きくボラティリティが大きい時間帯
日本時間の深夜3時~4時頃も大きな値動きを見せる時間帯となっている
このように、時間帯によってもボラティリティは異なるため、自分の投資スタイルに合った時間帯を選ぶことも勝率を上げるには必要かもしれない
FXの通貨ペアによるボラティリティの違い
通貨ペアによってボラティリティの大きさやトレーダーの取引量は異なる
それによって突発的な値動きがあったり、その通貨を発行する国の情勢によっては大きな為替の変動が起こったりすることもある
例えば、日本人にとってメジャーな米ドル/円のペアやユーロ/円の通貨ペアは価格の動きが比較的安定し、ボラティリティが大きすぎない
そのため、落ち着いて値動きを観察することができ、初心者に向いている通貨ペアと言える
先進国の通貨でもっとボラティリティが大きいのはポンドと言われていて、大きな値動きがあるので初心者は特に注意が必要な通貨である
日本やアメリカのように経済が安定している国の通貨はボラティリティが小さく、新興国のように経済が未成熟な国の通貨はボラティリティが大きくなる
株式のボラティリティ
株式投資はFXと同様に日常の値動きの幅で利益を狙うこともできるし、長期的に保有する資産運用目的、将来の資産形成に使うことも可能
長期的な投資の場合、短期的な価格の変動ではなく長期的な資産の成長を狙うため、どちらかと言えばボラティリティが小さい銘柄を選ぶ方が望ましい場合がある
リスクの許容度によって、適したボラティリティの銘柄やポートフォリオを選ぶことが大切
そこで、目的や投資のスタンスにあったボラティリティの使い方を知っておく必要がある
よく、株式は長期保有でリスクを低減できると言われる
しかし、運用の期間が長くなれば不確実性が高くなるためボラティリティが大きくなるのが一般的で、リスクは大きくなると言える
長期保有というより長い目線で資金を分散させることが長期投資でリスクが低減できる理由といえる
また、年平均利回りにすると大数の法則によってリターンが平均化されるだけであり、リスクが小さくなるわけではない
どちらかと言えば、投資期間が長ければ長いほど先のことは読みにくくなるため、ボラティリティは長期になれば高くなってリスクも上がる
長期の資産運用、資産形成においてこのリスクとボラティリティは誤解されて伝えられがちなので、誤解しないように注意が必要
そして、短期取引おいて株式のボラティリティは、市場の取引開始直後の時間帯でボラティリティが大きくなる傾向がある
その理由は、取引時間外の間にさまざまなニュースが流れ、それを見て買い、売りを判断する人が多いから
さらにプレスリリースやIRが発表されると、それの情報によって売買が行われ、株価が急騰したり急落したりすることがある
例えば上場企業は毎年業績予想を出しているが、業績予想に対して業績がそれを上回っていれば、年の途中で業績予想の上方修正を行うことがある
逆に業績が予想よりも下回っているようだと、下方修正を行うことがある
あるいは新製品の発表などが行われると値動きが大きくなり、ボラティリティが大きくなることも考えられる
ボラティリティを分析するための指標(インジケーター)
テクニカル指標を使ってボラティリティを分析することが可能
ボリンジャーバンド
ボリンジャーバンドは移動平均線と標準偏差で構成されており、移動平均を表す線の上下に値動きの幅を示す線を加えて表示する平均値から見て上のレンジはアッパーバンド、下のレンジはロワーバンドと呼ばれる
ボリンジャーバンドでは、価格の大半がバンドの中に収まるという統計学を活用しているのが特徴
ただし、バンドの中に収まるというのも、現在までのデータを用いた場合であるということに注意が必要
つまり、明日になれば、値動きによってバンドの幅が変わっていくということ
ボリンジャーバンドでは、バンドの幅が広いとボラティリティは大きく、狭ければボラティリティは小さいと判断することができる
ATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)
ATRは、特定の期間におけるボラティリティを測るために使われるテクニカル指標
1978年にテクニカルアナリストのジョン・ウェルズ・ワイルダー・ジュニアによって開発された
「当日の高値-前日の終値」「当日の安値-前日の終値」「当日の高値-当日の安値」のうち最も大きい値をTR(真の値幅)として、その移動平均線を表したものがATR
ATRの値が上昇するとボラティリティが高く、下落するとボラティリティが低くなっていると判断できる
DMI
DMIは、日本語で「方向性指数」と呼ばれる、トレンドの方向性や強さを示すテクニカル指標
ジョン・ウェルズ・ワイルダー・ジュニアによって開発された
DMでは、ボラティリティからトレンドを分析する
つまり、終値の比較ではなく、当日の高値安値と前日の高値安値を比べてどちらが大きいかということを基準に、相場の強弱を判断する
DMIは+DIと-DI、ADXという3本のラインを使い相場のトレンドの強弱を分析する
+DI、-DIは上昇・下降トレンドそれぞれの強さを、ADXは、トレンド自体の強さを示している
グラフを見るとADXは正の数値で表され、その数値が大きければ大きいほど、上昇トレンド、下落トレンドを問わず、トレンドの強いことを示す
RVI
RVI(Relative Volatility Index)はRSIを応用したテクニカル指標で、相場のボラティリティが拡大しているか、縮小しているかを判断できるもの
相対的ボラティリティ指数と呼ばれることもある
1993年にドナルド・ドーシーによって開発された
RVIの値が0より上であれば、相場のボラティリティが拡大している、RVIの値が0より下であれば、相場のボラティリティが縮小していると判断できるようになっている
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