チャート分析をするうえでマルチタイムフレーム分析(MTF)は必須です。
マルチタイムフレーム分析ではトレードする時間軸のチャートだけでなく、上位足、下位足の値動きも考慮して分析を行います。
自分が見ている時間足のみを見た値動き予想と上位足の値動きのトレンドが逆行していると、予想は当たりにくくなるのでMTFは重要です。
この記事ではマルチタイムフレームの重要性、スマホでも簡単にできるマルチタイムフレーム分析の方法を解説していきます
マルチタイムフレーム分析(MTF)とは
マルチタイムフレーム分析とは、複数の時間足を見て相場を分析する手法のことです。
1つの時間足だけで分析すると視野が狭くなってしまいがちですが、複数の時間足を分析することで広い視野を持つことができます。
MTFでは基本的に上位足から下位足に向かって分析していきます。
上位足の流れと下位足のタイミングを複合的に考えることでより精度の高い分析が可能になります。
マルチタイムフレーム分析(MTF)での長期足・中期足・短期足の役割
マルチタイムフレーム分析は、主に長期足・中期足・短期足という3つの時間足を軸に行います。
長期足は日足という風に目安が決まっているわけではなく、トレードスタイルによって長期足・中期足・短期足は変わってきます。
3つの時間足それぞれの役割を理解して、マルチタイムフレーム分析を活用できるようになりましょう。
長期足の役割
長期足は、メインの時間足(中期足)よりも長い目線で分析するのが目的です。
長期足を見ることでメインの時間足だけを見ていては気づけない、より長い時間軸のトレンドを見つけやすくなります。
株やFXの相場では、長い時間足のトレンドの方が下位足のトレンドよりも影響が強いです。
なのでまず長期足のトレンドを把握しておくことで、メインの時間足でエントリーする方向を間違えにくくなります。
中期足の役割
中期足は、トレードスタイルのメインの時間足です。
例えば、デイトレードなら1時間足、スキャルピングなら1分足、スイングトレードなら日足などです。
長期足で決めた方向性を念頭に置きながら、エントリーや決済のタイミングは基本的にこの中期足で判断することになります。
短期足の役割
短期足は、主に詳細な売買ポイントを探るのに活用します。
中期足を見て売買タイミングが来ていると判断した後、より細かい判断を短期足で行います。
短期足のチャートに表示されたローソク足パターンなどからベストな売買タイミングを分析します。
長期足と短期足ではチャートの見方が異なるので注意しましょう。
長期足:トレンドラインなど大きな流れの把握
短期足:チャートパターンなど直近の値動きの把握
マルチタイムフレーム分析のメリットと効果
マルチタイムフレーム分析は、複数の時間足を活用することで、より高い精度で相場を読み解くことができる手法です。
ここでは、初心者にもわかりやすく「この分析を取り入れることで得られる具体的なメリットや効果」を解説していきます。
トレードの勝率を高めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
相場の「全体像」を把握できる
マルチタイムフレーム分析の大きな強みの一つが、「今の相場がどこに向かっているのか」という全体像を把握できる点です。
たとえば、短期足だけを見ていると一時的な上下に振り回されがちですが、上位足(週足や日足)を見ることで、現在の価格が「上昇トレンドの中の押し目」なのか「下降トレンドの戻り」なのかといった背景を読み取ることができます。
このように、相場の構造を俯瞰的に捉えることで、トレードの方向性に一貫性を持たせることが可能になります。
だましやノイズを回避しやすくなる
短期足だけを見ていると、一見トレンド転換のように見える動きが、実は上位足では単なる押し目や戻りにすぎなかった…ということはよくあります。
こうした“だまし”に引っかかってしまうと、逆方向へのエントリーや無駄な損切りを繰り返す原因になります。
マルチタイムフレーム分析を取り入れることで、上位足のトレンドと方向性をあらかじめ把握し、短期的な値動きが本物かどうかを見極めやすくなります。
その結果、無駄なエントリーを減らし、より優位性の高いタイミングに絞ってトレードすることが可能になります。
根拠のあるトレード判断ができる
マルチタイムフレーム分析を活用することで、複数の視点から相場を確認できるため、エントリーやエグジットの判断により多くの根拠を持たせることができます。
たとえば、日足で上昇トレンドを確認したうえで、1時間足でサポートラインへの到達、15分足で反発のローソク足パターンを確認できたとすれば、それぞれが一致した強い買いの根拠となります。
このように、時間足ごとに役割を分けて相場を見ることで、偶然ではなく必然に基づいた判断ができるようになり、トレードの精度と再現性を高めることができます。
トレードスタイルに柔軟に対応できる
マルチタイムフレーム分析は、スキャルピング・デイトレード・スイングトレードといったあらゆるトレードスタイルに応用できるのも大きな魅力です。
たとえば、スイングトレードでは週足や日足を使って大きな流れをつかみ、4時間足でタイミングを計るといった使い方ができます。
一方、スキャルピングでは15分足や5分足を見ながらも、1時間足で大局を確認することでノイズを減らすことが可能です。
このように、自分の時間軸に合わせて適切な時間足の組み合わせを選ぶことで、より安定したトレードができるようになります。
1つの時間足だけで取引すると失敗しやすい理由
なぜ1つの時間足だけで分析するとエントリーが失敗しやすいのかというと、現在の動きが短期的なものか長期的なものかが判断できないからです
為替相場では長期的には上昇していても、短期的に下降することがあるように、常に短期・中期・長期トレンドが同じ動きをしているとは限りません。
そのため1つの時間足だけなら同じようなトレンド相場に見えても、実は大きな時間足に反しているトレンドということが多々あり、このようなトレンドに乗っかろうと考えてエントリーしてしまうと、反対方向の大きいトレンドがすぐに始まってしまい大きな損失を被ってしまう可能性があります
マルチタイムフレーム分析の基本
マルチタイムフレーム(MTF)分析の基本ルールは3つあります
- 長期足から分析
- 長期足のトレンドを最重視
- 短期足でベストなエントリータイミングをはかる
これら3つのルールにそって分析をすればマルチタイムフレーム分析をしていることになります
1個ずつ解説していきます
マルチタムフレーム分析のルール① 長期足から分析
1つ目のルール 長期足から分析することは簡単です
チャートを見るときの設定を普段1時間足でやっているなら4時間足とかを見ておけばそれでクリアです
メインが1時間足でなくて日足でも5分足でも同じように1段階長い時間足のチャートで分析します
なぜ長期足から分析するのでしょうか
その理由は上位足の大きな流れにそれより短い時間足は逆らうことはできないからです
自分が見ている時間足では下降トレンドが上昇トレンドに転換したと思っても、長期足でチャートを見ると長い下降トレンドの一部のもどりかもしれません
チャートはフラクタル(入れ子)構造 上位足=下位足の集まり
当然すぎることですが、ローソク足は短い時間足を集めると、長い時間足のローソク足が書けます
5分足12本分の期間のチャートの高値、安値、期間の始値、終値を使えば1時間足のローソク足を書くことができます
だから、上位足のチャートを書くために使っている数字は下位足のチャートを書くのに使っている数字の一部ということです
FXチャートのインジケーターの多くは指定した期間のローソク足の高値、安値、始値、終値から算出される数値をもとに作られています
マルチタムフレーム分析のルール② 長期足のトレンドを最重視
”長期足から分析”のところと少しかぶってしまいますが、大事なことなので2回いいます
長期足のトレンドは短期足より重要です
長期足で上昇トレンドが発生していたとして、それより短期足のトレーダーは長期足の上昇トレンドの押し目に向かっていく下落をショートでとったりすることもあります
でも、それを長期足の上昇トレンド中にやっていると自覚していないと痛い目にあいます
いつまでもショートで利益を引っ張れると思ってしまうとせっかくできた含み益もすぐに失うかもしれません
相場の大きな流れ(トレンド)をつかむために長期足から分析していくことが重要です
マルチタムフレーム分析のルール③短期足でベストなエントリータイミングをはかる
長期足で大きな流れを把握したら、次はメインの時間足でエントリー方向を決めます
その次に見るのが短期足です
メインの時間足をより細かく分解したのが短期足なので、よりいいレートでエントリー/決済するには短期足を分析することで分析の精度があがります
1本のローソク足でわかる情報は陰線か陽線か、実体の長さ、ひげの長さくらいですが短期足を見ればそれらのローソク足が描かれるまでの経緯がより詳しくわかります
この細かい値動きの流れから自分の次の売買のタイミング/レートはいつが最適なのかをはかることができます
有名投資家も推奨するマルチタイムフレーム分析
投資やトレードの勉強をするための本として、必ずと行っていいほど紹介される本 投資苑でもマルチタイムフレーム分析は紹介されています
この本で紹介されている手法は自分が日足を見ている想定で、上位足である週足でトレンド把握し、日足で上位足のトレンドに反する動きを見つける。そして下位足でまたトレンドに戻っていこうとする動きを見つけるというものです
多くの投資家に支持される本でも紹介されている手法をやらない手はないですよね!
マルチタイムフレームの考え方は他の手法にも通じている
移動平均線というポピュラーなチャート分析インジケーターがありますが、このインジケーターで目印になるシグナルでパーフェクトオーダーというものがあります
このシグナルは短期足、中期足、長期足でトレンドがそろっていることを示すもので、マルチタイムフレーム分析で確認しようとしている他の時間軸の値動きを指標としている点で考え方が同じと言えます
マルチタイムフレーム分析の手法3選
基本的な考え方は共通ですが、マルチタイムフレーム分析にもいくつかやり方があります
3つのマルチタイムフレーム①トリプルスクリーン
投資苑の著者アレクサンダー・エルダーの手法で、複数時間軸のチャートを並列表示するという方法です
例えば、メインで日足を見ている場合、日足チャートといっしょに週足と4時間足を表示させるというものです
3つのマルチタイムフレーム②Know Sure Thing
Know Sure Thing(KST)はローソク足チャートを変換してシグナルを出す、ストキャスティクスなどのインジケーターの仲間です
KSTはレートオブチェンジ(ROC)という現在のレートと過去のレートの差のインジケーターに基づくインジケーターです
ROCで参照する過去のレートの時間軸を4つにすることで複数の時間足のデータを参照することになりマルチタイムフレーム分析が可能になります
3つのマルチタイムフレーム③チャート+長期足インジケーター
通常使用するチャートの上に長期足で使うインジケーターを表示する方法です
例えば日足チャートの上に5日移動平均線を表示させているとしたら、25日移動平均線を表示させると週足の5週移動平均線を表示させるのと同じことになるので、長期足の移動平均線を表示させることになります
マルチタイムフレーム分析を初心者が習得するためにやるべきこと
マルチタイムフレーム分析をFXや株のチャート分析初心者が使いこなせるようになるために今日からやるべきことは、複数時間足を表示させた画像や複数時間足のインジケーターを表示させたチャートの記録を作り、徹底的に言語化することです
僕がこのブログを始めたのも株やFXに関して勉強したことの理解を深めるというのが目的の1つです
言語化できないということは勉強したことを自分のものにできていないということです
ローソク足やインジケーターが表示されただけのチャートを見渡して、どれだけのことに気づき、どれだけのことを言語化できるのかを徹底的にやってみましょう
チャート分析を始めたばかりのころは感覚に頼ってしまい、なんとなく上昇トレンド、なんとなくトレンド反転した、というふうな見方しかできませんが、言語化を習慣化していくと、自分の中のチャート分析の基準が明確になっていき、はっきりとチャート分析の根拠が説明できるようになっていきます
MACDとストキャスティクスのお手軽マルチタイムフレーム分析
ここで例としてあげる方法は日足チャートに日足のストキャスティクスと週足のMACDを表示させる方法です
スマホで僕が使ってるチャートアプリでは一度に表示できるインジケーターは、1種類の時間足のものだけです
日足のチャート、MACD、ストキャスティクスを表示して、MACDのパラメーターをうまいこといじって週足のMACDにしていきます
MACDはMoving Average Convergence and Divergenceの略で、移動平均線をもとにした指標です
よく使われるMACDの設定はこんなかんじです
MACDライン・・・・12日、26日指数平滑移動平均線の差
シグナルライン・・・9日指数平滑移動平均線
MACDヒストグラム・MACDラインからシグナルラインの値を引く
これらをひとまとめに表示して、インジケーターとして使います
MACDの日足→週足変換で上位足をチェック
MACDでは指数移動平均線の期間を変えることができます
これをいい感じにして、週足のMACDをつくりましょう
週足チャートでは1週間分の値動きを1本のローソク足で表しています
つまり、日足のローソク足5本分が1本の週足のローソク足に圧縮されているのです
MACDの指数移動平均線で参照する期間を長くすれば、指数移動平均線を書くためのデータは何日分にもできます
1週間の稼働日は5日なので、日足のMACDを表示させる各期間を5倍すれば、実質週足のMACDと同じものが表示できます
このやり方は日足→週足だけでなく、4時間足→日足という方法も当然できます
下位足のインジケーターを上位足のインジケーターに変換するときには、それぞれの時間足の期間の比をインジケーターの期間にかけることで、変換ができます
マルチタイムフレーム分析のよくある質問
- Qマルチタイムフレーム分析とは何ですか?
- A
マルチタイムフレーム分析とは、複数の時間足(例:日足・1時間足・15分足など)を組み合わせて相場の方向性やトレンドの強さを判断する手法です。
上位足で環境認識を行い、下位足でタイミングを計ることで、より精度の高いトレードが可能になります。
- Qマルチタイムフレーム分析は初心者でも使えますか?
- A
マルチタイムフレーム分析は初心者でも基本的なルールさえ覚えれば、簡単にトレードに取り入れられる分析方法です。
まずは、取引している時間足より長い時間足と短い時間足のチャートを見る癖をつけるようにしましょう。
- Qマルチタイムフレーム分析はどの時間足で使えばいいですか?
- A
一般的には「上位足:トレンド把握」「中位足:戦略立案」「下位足:エントリー判断」と役割を分けて使います。
たとえば以下のような組み合わせがおすすめです
トレードスタイル 長期足 中期足 短期足 スイングトレード 週足 日足 4時間足 デイトレード 日足 1時間足 15分足 スキャルピング 4時間足 15分足 1分足
- Qマルチタイムフレーム分析で長期足と短期足の方向が逆の時はどうすればいいですか?
- A
まずは長期足の方向を優先するのが基本です。
たとえば、日足が上昇トレンドであれば、短期的な下落(押し目)で買いのチャンスを狙うのがセオリーです。
もし時間足の方向性がバラバラで迷ったら、トレードを見送る判断も重要です。
- Qマルチタイムフレーム分析だけで勝てますか?他の分析と併用すべきでしょうか?
- A
マルチタイムフレーム分析は非常に有効ですが、これだけで完璧というわけではありません。
サポート・レジスタンスやチャートパターン、テクニカル指標(移動平均線やRSIなど)と併用することで、より確度の高い判断が可能になります。
マルチタイムフレーム分析はあくまで「ベースの環境認識」として活用するのが理想的です。
- Qマルチタイムフレーム分析は移動平均線やRSIなど、テクニカル指標との相性はいいですか?
- A
マルチタイムフレーム分析は非常に相性が良いです。
たとえば、上位足で移動平均線に支えられているポイントを確認し、下位足でRSIのダイバージェンスが出たらエントリーを検討するなど、複数の視点を組み合わせることで、根拠が増しトレードの質が高まります。
- QTradingViewでマルチタイムフレーム分析を行う方法は?
- A
TradingViewではチャートを複数表示させたり、MPTC(マルチタイム期間チャート)を利用したりして、同じ銘柄を異なる時間足で同時に確認できます。
また、インジケーターの時間足を個別に設定することも可能です。
無料プランでも2画面表示まで対応しており、初心者にも扱いやすいツールです。
- Qマルチタイムフレーム分析ができるおすすめアプリ・ツールは何ですか?
- A
MT4 / MT5(MetaTrader)はカスタマイズ性が高く、様々なインジケーターを組み合わせたマルチタイムフレーム分析が可能なおすすめのツールです。
- Qマルチタイムフレーム分析を初心者はどこから学べばいいですか?おすすめの練習方法はありますか?
- A
まずは1つの通貨ペア・1つのトレードスタイルに絞って、上位足と下位足を見比べながら分析する練習から始めましょう。
デモ口座で実際にトレードしてみると、理解が早まります。
TradingViewなどでチャートを日々観察し、相場の「流れ」を感じることが上達の近道です。
- Qマルチタイムフレーム分析は意味がないという情報もありますが実際どうなんでしょうか?
- A
マルチタイムフレーム分析は上位足、下位足の値動きを確認し総合的に値動きを判断することでダマシにあう確率を減らせるという点で意味があります。
1分足などの短期の時間足が、30分足、1時間足などの長期の値動きをつくる(長期足の値動きに短期足が従うのではない)。
なので、マルチタイムフレーム分析は意味がないという意見も見かけますが、複数の時間足を見ておいて損はないと思います。
マルチタイムフレーム分析のまとめ
マルチタイムフレーム分析は、複数の時間軸でチャートを確認することで、相場の全体像と現在のトレンドの強さを把握できる強力な手法です。
短期足だけに頼ったトレードでは見落としがちな「大局の流れ」や「だまし」を回避しやすくなるため、勝率の向上にもつながります。
特に、1時間足でエントリーポイントを探す際に、日足や4時間足で環境認識を行うことで、より根拠のあるトレード判断が可能になります。
TradingViewのようなツールを活用すれば、複数の時間足を同時に表示したり、インジケーターを時間軸ごとに調整したりすることも可能です。
初心者のうちは難しく感じるかもしれませんが、まずは「上位足で方向性を確認し、下位足でタイミングを計る」という基本から始めてみましょう。
マルチタイムフレーム分析を取り入れることで、あなたのトレード精度は確実に一段階レベルアップするはずです。
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