「S&P500のPERは今高いの?」「割安・割高の判断材料になる指標を知りたい」──そんな疑問を持つ投資家に向けて、本記事ではS&P500のPER(株価収益率)の調べ方と評価方法を徹底解説します。
PERの基礎知識から、実際にデータを確認する方法、さらにシラーPERやバフェット指数などの補助的な指標まで、初心者にもわかりやすく紹介します。
S&P500に投資する際の判断材料として、今後の投資戦略にぜひお役立てください。
S&P500の基本
まずは、S&P500とは何か、その構成や役割について簡単に押さえておきましょう。
米国株式市場を代表する指数であるS&P500は、世界中の投資家にとって重要なベンチマークです。
PERを含む評価指標を理解するためにも、その土台となる仕組みを知ることが大切です。
S&P500とは何か
S&P500(エス・アンド・ピーごひゃく)とは、米国の代表的な株価指数のひとつで、ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場している大型株500社で構成されています。
Standard & Poor’s社(現在はS&P Dow Jones Indices社)が算出・公表しており、米国経済全体の動きを示す重要な指標として、世界中の投資家に利用されています。
株価指数には他にも「ダウ平均株価(30銘柄)」や「NASDAQ総合指数」などがありますが、S&P500は業種や企業規模のバランスがよく、時価総額加重平均で構成されているため、より実態に即した市場全体の動向を反映しやすいとされています。
そのため、長期投資やインデックス投資を行う際のベンチマークとして広く採用されています。
S&P500の構成ルールと見直し
S&P500は単に米国の時価総額上位500社を並べたものではなく、厳格な採用基準に基づいて構成される指数です。
採用されるためには、以下のような条件を満たす必要があります。
- 米国企業であること
- 時価総額が一定水準以上(2025年時点で約150億ドル以上)
- 十分な流動性があること(株式の取引量)
- 四半期利益を継続して計上していること(黒字要件)
- 公開株式比率(フリーフロート比率)が一定以上あること
これらの条件を満たしても、最終的な採用はS&P Dow Jones Indicesの委員会によって決定されます。
また、S&P500の構成銘柄は年に数回の見直しが行われ、企業の業績悪化や買収・合併などがあれば除外・入れ替えが発生します。
このように、S&P500は定期的に調整されることで、市場の現状に即した代表性を維持しているのが特徴です。
S&P500の主要銘柄
S&P500は、米国を代表する大企業500社で構成されており、その中には世界的な影響力を持つ企業が数多く含まれています。
たとえば、アップル(Apple)、マイクロソフト(Microsoft)、アマゾン(Amazon)、アルファベット(Googleの親会社)、エヌビディア(NVIDIA)といったハイテク大手が上位にランクインしています。
これらの銘柄は指数全体に大きな影響を与えるため、S&P500のPERを見る際にも、こうした主力銘柄の業績や評価が強く反映されます。
また、テクノロジー分野だけでなく、金融(JPモルガン、バンク・オブ・アメリカ)、ヘルスケア(ジョンソン・エンド・ジョンソン、ユナイテッドヘルス)、消費財(P&G、コカ・コーラ)など、業種のバランスも取れており、米国経済の縮図ともいえる指数です。
S&P500の過去のパフォーマンス
S&P500は長期的に安定した成長を続けてきた株価指数として知られており、過去のパフォーマンスは世界中の投資家から注目されています。
たとえば、過去30年(1995年〜2025年)でのS&P500の平均年間リターン(配当込み)はおおよそ7〜10%前後とされており、インフレを考慮しても高い実質リターンを記録しています。
もちろん、リーマンショック(2008年)やコロナショック(2020年)など、一時的な大幅下落はあるものの、その後は力強く回復してきた実績があります。
このようなパフォーマンスは「時間を味方につける」長期投資の効果を示しており、S&P500に分散投資を行うインデックスファンドが人気を集めている理由の一つです。
ただし、将来も同様の成長が続くとは限らないため、指標(PERなど)を使って割高・割安を判断しながら投資する姿勢が重要です。
PERの基本
PERとは何か
PER(Price Earnings Ratio、株価収益率)とは、株価が企業の利益に対してどれくらい割高・割安かを測る指標です。
計算式は「PER = 株価 ÷ 1株あたりの純利益(EPS)」で表され、企業の将来の利益成長や投資家の期待感を示す重要なバリュエーション指標として広く使われています。
PERが高いほど「利益に対して株価が高い」=期待先行、低いほど「株価が割安」と評価される傾向がありますが、業種や成長フェーズによって適正水準は異なります。
PERでわかること
PERを使うことで、現在の株価が企業の利益に対してどれだけ高い(または安い)水準にあるのかを客観的に判断できます。
たとえば、同業他社と比較してPERが高ければ「市場から将来の成長が強く期待されている」、逆にPERが低ければ「成長期待が薄い」または「割安に放置されている」といった見方ができます。
また、S&P500などの株価指数全体のPERを見ることで「市場全体が過熱しているかどうか」を測ることも可能です。
長期的な平均PERと比較して、現在のPERが高すぎる場合はバブル的な水準、低ければ投資妙味があると判断する材料になります。
PERの目安と注意点
PERには「何倍なら割安・割高」という明確な基準はありませんが、一般的には以下のような目安があります。
- 10倍以下:割安とされる水準(ただし成長性が低い場合も)
- 15倍前後:平均的な評価水準
- 25倍以上:割高と見なされやすい(高成長株などは例外)
ただし、PERはあくまで「過去または予想の利益」に対する評価であり、将来の業績変化や一時的な利益のブレで大きく変動することがあります。
特に赤字企業や利益が急増・急減している企業では、PERが極端な数値になったり、計算できない場合もあるため注意が必要です。
また、業種によって平均的なPERが異なるため、個別企業のPERを見るときは、同業他社との比較や、過去の自社PERとの比較が効果的です。
S&P500のPERを調べる方法
S&P500のPERは、株価指数としての「全体的な割高・割安」を知るうえで重要な指標です。
個別株と違ってS&P500のPERは証券会社の口座画面では表示されないことが多いため、専用の情報サイトや金融データベースを利用するのが一般的です。
代表的な確認方法を解説していきます。
multpl.comで確認する
米国の代表的な経済指標サイト「multpl.com」では、S&P500のPERを実績ベース(トレーリングPER)で確認できます。
トップページでは現在値がグラフとともに表示され、さらに過去の平均・中央値・最大・最小などの履歴データも掲載されています。
このサイトの特長は、シンプルな構成で視覚的にわかりやすいグラフ表示と、歴史的水準との比較がしやすい点にあります。
たとえば「現在のPERが過去の平均を上回っているか」を一目で把握できます。
WorldPEratio.comで確認する
WorldPEratio.comでは、SPY(S&P500 ETF)に基づいた推計PERを提供しており、また過去の平均から現在値が割高かどうかの評価も掲載しています。
まずページトップに現在のPERが表示されています。
過去からのPERの変動はグラフで表示されています。
1年、5年、10年、20年の移動平均線と移動平均線からの乖離度(σ、2σ)をグラフに追加することもできます。
このサイトでは割安・割高は以下の方法で判断されています。
Methodology
The Average P/E (μ) and the Standard Deviation (σ) are calculated excluding 20% outliers (i.e. over a range of values excluding 10% of observations from the top and 10% from the bottom of the dataset). Additionally, P/E values greater than 70 or lower than 1 are logarithmically normalized to reduce distortions.
A P/E between (μ – σ) and (μ + σ) is considered “Fair“, over a specific timeframe.
A P/E greater than (μ + σ) is defined “Overvalued“, greater than (μ + 2σ) is defined “Expensive“.
A P/E less than (μ – σ) is defined “Undervalued“, less than (μ – 2σ) is defined “Cheap“.引用元:https://worldperatio.com/index/sp-500/
World PE Ratioでは平均P/E(μ)および標準偏差(σ)は、上位10%と下位10%の外れ値(合計20%)を除外したデータ範囲に基づいて計算されています。
つまり、極端に高い値と低い値を除いて、より信頼性のある中央値周辺のデータを元に分析しています。
また、P/Eが70を超えるか1未満の値については、歪み(ディストーション)を抑えるために対数正規化が施されています。
これらの処理を行い、以下の基準でPERを評価しています。
PERの位置 | 評価 |
---|---|
μ − σ 〜 μ + σ の範囲内 | Fair(妥当) |
μ + σ を超える | Overvalued(割高) |
μ + 2σを超える | Expensive(非常に割高) |
μ − σ を下回る | Undervalued(割安) |
μ − 2σ | Cheap(非常に割安) |
グラフでは1年、5年、10年、20年の平均との比較のみですが、ページ下方の表では1年刻みで20年まで、平均との比較で妥当か割高か割安かを評価した結果を確認することができます。
このサイトの利点は、過去のPERとの比較により割安・割高の判断がしやすい点です。
World PE RatioのPERの計算方法はやや簡略化された計算であるため、厳密な財務データに基づいた公式PERとは若干差が出ることもあります。
YChartsなどで推移を見る
より詳細なデータや長期推移を見たい場合は、「YCharts」や「Trading Economics」「Macrotrends」などの経済データサイトが便利です。
YChartsでは、最新PERだけでなく、前月比・前年比の変化、チャートによる推移確認が可能です。
たとえば2025年3月のリポートでは、PERは約25.90倍で前年比−5.7%と掲載されていました。
こうしたサイトは時系列データや比較機能が充実しており、投資判断に役立つ資料として重宝されます。
ただし、一部の機能は有料プラン限定である点や、情報が英語中心である点には注意が必要です。
PER以外のS&P500の評価に使える指標
S&P500のPERだけでなく、他のバリュエーション指標をあわせて見ることで、より多角的に市場全体の割高・割安を判断することができます。
このセクションでは、代表的な4つの評価指標についてわかりやすく紹介します。
シラーPER(CAPE)
シラーPER(CAPE:Cyclically Adjusted Price Earnings ratio)は、米国の経済学者ロバート・シラー教授が提唱した指標で、S&P500の「景気循環調整後のPER」として知られています。
通常のPERが1年分の利益で割るのに対し、シラーPERは過去10年間の実質利益(インフレ調整後の平均利益)を使って計算されます。
このため、一時的な利益の変動や景気の山谷に左右されにくく、長期的な割高・割安の判断材料として重宝されています。
歴史的には、シラーPERが30倍を超えると過熱感が強く、10倍前後は割安とされてきましたが、時代背景や金利環境によって基準は変動するため注意が必要です。
PSR(株価売上高倍率)
PSR(Price to Sales Ratio、株価売上高倍率)は、企業の時価総額を売上高で割った指標で、「企業の売上に対して株価がどの程度評価されているか」を示します。
計算式は「PSR = 時価総額 ÷ 年間売上高」で、利益が出ていない企業や赤字の企業にも使えるという点で、PERの代替指標として注目されています。
特にハイテク企業やグロース株の多いS&P500では、一時的に利益が出ていない企業もあるため、PSRを活用することでより客観的な評価が可能です。
一般的には、PSRが1倍以下で割安、10倍以上で割高とされますが、成長率の高い企業ではPSRが高くても正当化される場合があります。
S&P500全体のPSRを確認することで、市場の売上ベースの評価水準を知ることができ、PERと組み合わせて使うとより精度の高い判断ができます。
PBR(株価純資産倍率)
PBR(Price to Book Ratio、株価純資産倍率)は、企業の時価総額が帳簿上の純資産(株主資本)の何倍であるかを示す指標です。
計算式は「PBR = 株価 ÷ 1株あたりの純資産(BPS)」または「時価総額 ÷ 純資産」で表されます。
PBRが1倍を下回ると「企業の解散価値(純資産)より株価が安い」ことになり、理論的には割安と評価されます。
一方で、成長期待が高い企業では2倍、3倍以上の水準も珍しくありません。
S&P500全体のPBRを見ることで、「資産価値に対して市場がどれだけプレミアムをつけているか」を把握できます。
特に金利が低い局面ではPBRが高くなりやすく、金利上昇局面では評価が見直される傾向があります。
バフェット指数
バフェット指数(Buffett Indicator)は、「株式市場の時価総額 ÷ 名目GDP」で算出される指標で、株式市場全体の割高・割安を測るために使われます。
著名投資家ウォーレン・バフェット氏が「市場の総体的なバリュエーションを判断する最良の単一指標」として推奨したことから、この名前で広まりました。
一般的に、バフェット指数が100%を超えると株式市場は過大評価されている可能性があり、130%〜150%を超える水準では過熱感が強いとされます。
逆に70%以下であれば割安と考えられることが多いです。
S&P500は米国株式市場を代表する指数であり、このバフェット指数の変動とも密接に関係しています。
長期的な投資判断や、市場のリスク水準を測る補助材料として活用できますが、短期的な売買タイミングを計るには不向きです。
S&P500 PERに関するよくある質問
S&P500とオールカントリーどちらに投資するべきでしょうか
S&P500とオールカントリー(全世界株式)は、どちらも長期投資で人気の高いインデックスですが、それぞれ特徴が異なります。
S&P500はアメリカの大企業に集中投資する指数であり、過去の実績では高い成長率と安定したパフォーマンスが魅力です。
S&P500への投資は特に米国企業のイノベーション力や収益性の高さが反映されやすく、リターンを重視したい投資家に向いています。
一方で、オールカントリーは先進国から新興国まで、全世界の株式を対象にしており、地域分散が効いている点が強みです。
アメリカ偏重を避けたい場合や、世界経済全体の成長を取り込みたいという考えであれば、オールカントリーが適しています。
結論として、「高成長を狙いたいならS&P500」「分散を重視するならオールカントリー」と考えるとよいでしょう。迷う場合は、両方を一定割合で組み合わせるのも有効な選択肢です。
投資先をS&P500だけにしぼっても大丈夫でしょうか?
S&P500だけに投資することは、多くの投資家にとって合理的な選択とされています。
というのも、S&P500は世界最大の経済大国・米国の代表的な企業500社で構成されており、すでに高いレベルで「分散」が効いているからです。
さらに、S&P500企業の多くはグローバルに事業を展開しており、米国だけでなく世界中の経済成長の恩恵も受けています。
そのため、S&P500への投資=米国経済+国際経済への間接的な投資と捉えることもできます。
ただし、アメリカ市場が長期的に停滞した場合には、全体のパフォーマンスに影響を受けやすいという「地域集中リスク」はあります。
そのため、リスクをより抑えたい場合は全世界株式(オールカントリー)などを組み合わせて分散するのも一つの方法です。
S&P500の最適な買付タイミングはいつでしょうか?
S&P500に投資する際、「いつ買うのがベストか?」という問いは多くの投資家が抱える悩みの一つです。
結論から言えば、最適な買付タイミングを正確に見極めるのは非常に難しく、長期的には「時間を味方につける投資」が効果的とされています。
過去のデータでは、一定期間ごとに定額で投資する「ドルコスト平均法(積立投資)」が、高値掴みのリスクを抑えながら、平均的な買付価格を引き下げる手法として有効でした。
特に、S&P500のように長期的に成長してきた資産クラスでは、この戦略がよく機能します。
一方で、大きな下落局面でまとまった資金を投入する「一括投資」は、うまくいけば高リターンも狙えますが、タイミングの見極めに失敗すると大きな損失につながる可能性もあります。
そのため、多くの初心者にとっては、毎月の積立でタイミングに依存しない投資を続ける方法が、心理的にも安定しやすくおすすめです。
S&P500に100万円投資したら10年後はいくらになるでしょうか?
S&P500に100万円を投資した場合、10年後にいくらになるかは「年平均リターン」によって大きく変わります。
過去の実績では、S&P500は年率7〜10%程度のリターンを記録しており、複利の力を活かせば資産は大きく増える可能性があります。
たとえば、年平均リターンが7%の場合、以下のように増加します。
- 100万円 ×(1+0.07)¹⁰ ≒ 約197万円
年平均リターンが10%であれば、10年後には約260万円程度になる計算です。
ただし、これはあくまで「平均」の話であり、途中で大きな下落があったり、リターンが想定より低い場合には、結果が大きく変わる可能性もあります。
そのため、期待リターンに頼りきるのではなく、長期的な視点で継続投資し、リスクも想定しておくことが重要です。
S&P500のPERの現在値や推移を確認する方法はありますか?
S&P500の現在のPER(実績PER/トレーリングPER)を確認するには、信頼性の高い専門サイトを活用するのが最適です。
以下は代表的な確認先です。
- multpl.com:現在のS&P500のトレーリングPERと、過去平均や最小・最大値などの歴史データが閲覧できる定番サイトです(例:最新PER ≒ 30.41倍)。
- WorldPEratio.com:SPY ETFベースの推計PERを提供しており、2025年7月30日時点で約26.07倍と表示されています。過去5年や10年の平均との比較分析も可能です。。
- YCharts:最新リポートでは、2025年3月時点でPER ≒ 25.90倍、前期比−7.5%、前年比−5.7%という情報が掲載されています。
これらのサイトでは、単に最新数値を見るだけでなく、過去の平均や標準偏差と比較する機能が豊富です。
そのため、現在のPERが「過去と比べてどう評価される水準なのか」を理解する上で非常に有用です。
なお、サイトによっては「トレーリングPER(実績PER)」と「フォワードPER(予想PER)」が混在している場合があるため、多くは「trailing P/E」と明記されています。
目的に応じてどちらの数値を見ているかを確認することが重要です。
S&P500のPERの調べ方まとめ
S&P500のPERは、米国市場の割高・割安を判断するうえで重要な指標です。
この記事では、PERの基本から始まり、S&P500の構成やPERの具体的な調べ方、さらには他の補助指標(シラーPER、PBR、バフェット指数など)についても解説しました。
PERの最新データは multpl.com や WorldPEratio.com などの専門サイトで簡単に確認できます。
また、PERだけに頼るのではなく、複数の指標を組み合わせて総合的に判断することが、精度の高い投資判断につながります。
今後の投資判断に役立てるためにも、S&P500のPER推移を定期的にチェックし、過去との比較や相場の過熱感を冷静に見極めていきましょう。
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